10月の学習会には、イギリスで性売買廃止を目指し活動するアリ・モリスさんを講師にお迎えしました。
秋晴れの中、池袋IKE・Bizに11名の参加者が集い、英国におけるフェミニスト・コンシャスネス・レイジング(フェミニストの意識向上)について講義を受けました。
フェミニストの意識向上、活動継続、そして連帯のために大切にすべき事柄を、アリさんの団体【FiLiA】が発行するパンフレットをもとに読み解く、貴重な時間となりました。
講義後はアリさんへの質疑応答の時間が設けられ、参加者から熱量の高い質問が続出しました。
質疑応答の内容を一部まとめ、ここに掲載します。
質問:
意識改革のパンフレットで、女性の違いを前向きかつ積極的に捉えることを勧めている部分に感銘を受けました。私は、女性全体の基盤が弱いことが、私たちが自分たちの違いを問題視し、否定的に捉えてしまう要因になっていると感じがちです。
回答:
私は、男性支配社会は女性同士の対立を楽しんで見ていると思います。そして、私たちの間の違いは争点や分断の材料にされてしまいます。しかし、意識改革は、女性が互いの違いを肯定的に見ることを促すプロセスです。だからこそ、【FiLiA】では、できるだけ多くの黒人女性を含め、人種差別の問題における女性間の連帯を強めることを目指しています。
質問:
私は最近、SNSでトランス排除的ラディカルフェミニスト(TERF)から批判を受けました。それは、トランスジェンダーの男性スタッフが接客をしている実店舗のビジネスを批判したことがきっかけです。その店は女性向けの親密な衛生用品を販売しており、これが問題だと感じました。今まで女性の店員とお客さんしか見たことがなかったので、その男性に接客されて驚いてしまいました。見た目や声から、男性であることは明らかでした。しかし、TERFたちは、私がトランスジェンダーの人々の雇用を差別していると批判してきました。イギリスでも、トランスジェンダー問題を巡ってTERF同士が対立するようなことはありますか?
回答:
イギリスでもTERF間の対立はありますが、トランスジェンダーへの対応が原因ではありません。むしろ、人種問題をめぐる対立が見られます。特に、TERFが右派の団体と協力して移民に反対することが問題になっています。私たちの活動において、特に【FiLiA】ではブラック女性をすべての活動に積極的に参加させようとしているため、人種差別の問題が内部で浮上しています。
質問:
私は中間管理職として働いていますが、部下の男性社員に対して、その人が持つであろう性差別的な考え方を常に見極めながら、それぞれに合わせて問題が起きないように対応しています。しかし、男性の中間管理職はそのようなことを考える必要もなく、ただ管理するだけですんでいるのが現状です。私たち女性は本当に多様な形の性差別に直面しており、30代の私たち世代がこの男性部下からの性差別の問題に取り組む必要があると感じています。
回答:
はい、女性が直面する性差別の種類は非常に多様で、ほとんどの人には見えにくいものです。
質問:
私は日本で活動する女性器切除(FGM)に反対するグループのメンバーです。このグループでは、女性だけで構成すべきかどうかについて議論を行ってきました。私の考えでは、FGMという問題の親密性を考えると、女性だけで活動するのが理想的だと思います。しかし、この意見は少数派で、多くの運営メンバーからは、男性を含めないと活動を広げられないし、女性だけのグループでは資金も集めにくいと言われました。日本では、女性だけのグループという考え自体があまり受け入れられていないように思います。イギリスでも同じような状況でしょうか?女性だけの活動という考え方は強いですか?
回答:
FGMの問題に関しては、イギリスには女性のみのグループと、男女混合のグループの両方があります。女性だけのグループは、FGMの被害者に直接支援を提供する活動を行い、男女混合のグループは、より広範囲な活動を行っています。イギリスでは、女性にとって親密な問題に関しては、女性だけのグループで活動するのが適切だと見なされています。
質問:
私は売春サバイバーのグループに参加したことがありますが、グループ内で性産業の経験をめぐって対立が起こってしまいました。メンバー間でどのような施設で働いていたかによって“階級”のようなものが生まれ、感情的になりやすいため、対立がすぐにエスカレートしてしまいました。こういったグループは、サバイバーが自分の経験を話せる唯一の場なので必要だと思いますが、感情が絡むため、メンバー間の関係が難しくなってしまいます。イギリスでも同じような状況がありましたか?また、この問題にどう対処すればよいか、アドバイスがあれば教えてください。
回答:
イギリスでは、このようなグループのためにファシリテーターを活用しています。メンバーがトラウマやPTSD、感情の処理をするのを手助けします。理想的にはサバイバーたちが自分たちだけで集まれるのが良いのですが、継続性が重要なので、性暴力の問題に詳しいファシリテーターがメンバーをサポートすることで、グループの持続性が高まります。
学習会終了後はアリさんを囲んだ食事会となり、和やかな交流の時間を過ごしました。
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