皆様
新年あけましておめでとうございます。
本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。
大変遅くなりましたが、去る2024年12月7日に開催されました当会主催の学習会につきまして簡単なものですがレビューします。
テーマは国連特別報告者のリーム・アルサレム氏が5月に発表した売買春についての報告書で、担当者の森田成也先生に全訳をお任せし解説いただきました。
森田先生は当日朝ギリギリまで翻訳の手直しをしてくださる熱の入りようで、当日集結した参加者間でも活発な意見交換が行われました。
この当日使用のレジュメ、および報告書の全訳につきましては記事の末尾にPDFファイルとして添付いたしますので、ぜひご参照ください。
アルサレム氏の報告書は売買春を明確に「女性への暴力」「女性蔑視の原因かつ結果」であると位置づけ、リベラル左派による「セックスワーク・イズ・ワーク」論(いわゆるセックスワーク論、SWIW論)を一蹴するたいへん画期的な内容です。
また、オンラインに蔓延するポルノグラフィティも売買春と深く結びつき、女性の尊厳棄損と人権侵害を促進する旨の指摘についても、従来、表現の自由を重んずるリベラル左派からはなかなか出てこない言論で貴重です。
そして将来に向けての提言がわれわれと同じく北欧モデル型法整備(買春の犯罪化および売春の非犯罪化)であることにもぜひご注目ください。
ひじょうに長大な報告書なので、レジュメ内で森田先生が作成して下さった要約をこちらにも転載します。
1.売買春は女性に対する暴力である
売買春は女性や少女に対する搾取と暴力のシステムであり、身体的および心理的な被害を引き起こす重大な人権侵害である。
2.国家の責任
国家は、売買春に関わる女性の人権を保護し、回復を支援するための法律を整備し、被害者としての立場を重視して処罰ではなく支援に焦点を当てる義務がある。
3. 性差別と社会的不平等
売春システムは性差別、人種差別、階級差別に根ざしており、女性や少女が搾取と虐待に対して脆弱である。
4. 技術の役割 デジタルプラットフォームやオンラインポルノが女性の搾取を助長しており、多くの被害者が人身売買や強制的に売買春に巻き込まれている。これに対処するための国際的な規制と措置が求められている。
5. 子どもや弱者の影響
売春に関わる女性や少女は、特に社会的に疎外された背景を持つ人々に多く、時には家族や親密なパートナーに売られ、性的搾取に巻き込まれることがある。
6. 北欧モデルの提案
北欧モデル(性行為購買者を処罰し、被買春者は非犯罪化し、業者とピンプを厳しく処罰する)を支持し、被害者に対して保護と支援サービスを提供し、売買春システムからの脱却を支援すること。
7. 法整備と国際基準
人身売買防止と売買春システムに関する国際法の遵守が求められ、特に「人身売買および他者の売春からの搾取禁止条約」に基づく措置が必要である。
8. 売買春システムの廃止
売買春に関する権利ベースのアプローチを支持し、売春の中の人々の非犯罪化、包括的な支援の提供、および性行為購買者の処罰を求めている。
9. 公衆の認識と教育
売買春と性的搾取の被害についての公衆啓発活動の重要性を強調し、女性や少女の尊厳を尊重する教育が必要である。
10. 国際的な協力
人身売買防止、売買春への需要の抑制、そして被害者の権利保護に関して、国際的な協力が求められる。これには、デジタルと物的な性的搾取に対する国を越えた取り組みも含まれる。これらのポイントは、売買春を性別に基づく暴力として取り扱い、被害者中心の政策を強化する必要性と、女性の権利を守るための国際的な法的基準の推進を示している。
またこちらの報告書ですが、2024年11月18日の国連決議にて正式に採択されたとのことです。
重ね重ねですが、たいへん画期的である意味物議を醸す内容であるのに、日本国内ではほぼ話題になっておりません。
フェミニストも含めてまだまだ性売買の問題に関心が薄いのも一因かと思います。今後、より広く議論がなされるよう、当会も奮起してまいります。
次回行動と学習会は3月の土曜を予定しています。3月は国際女性デーがある月です。ぜひたくさんのご参加お待ち申し上げております。詳細は追ってお知らせいたしますので、まだの方はぜひニュースレターにご登録ください。
①レジュメ
②訳出済み報告書全文
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